近年、ある生物の復元図が正しくなかったという、今までの事実が覆されることが起こりました。

その生物の名はハルキゲニア

カンブリア紀を生き、現在は絶滅した生き物です。

ハルキゲニアは未知の部分が多く、今もなお研究が進められています。

  • ハルキゲニアとはどんな生物?
  • 復元図が変わった経緯 上下編
  • 復元図が変わった経緯 前後編
  • ハルキゲニアの他にカンブリア紀を生きた生物たち

ハルキゲニアとは一体どんな生き物なのか?

また、なぜ復元図が大幅に変更されたのか?

この記事を読むとますますハルキゲニアの魅力に引き込まれていくでしょう。

ハルキゲニアってどんな生物?

ハルキゲニアは、カンブリア紀に海に生息していましたが、今は絶滅しています。

体長は3〜5センチメートルほど。
背中に長いトゲが生えていて、足は触覚のように細長いハルキゲニア。

不思議な形をしているので「夢に出てきそうな」とか「幻覚のような」という名前の意味が込められています。

確かに、私たちが想像できないような不思議な形をしていますね。
ゲームに出てくるモンスターのような…。

 

しかしこのハルキゲニア。

復元した当初は、足の位置と背中の位置が逆さまになっていました。
もし逆さまだったらトゲで歩行していたのですね…。

そしてハルキゲニアの顔とお尻。

顔は丸くて、お尻が細長いものとされていましたが…
近年では顔とお尻にあたる部分も前後逆だったということが分かりました。

顔だと思ってた部分が顔じゃなかったなんて…。
今まで信じてきたものが覆された衝撃は大きかったのではないでしょうか?

長い研究の末、上下だけでなく前後も逆だったと分かったハルキゲニア。

なぜ、上下も前後も逆だったのが分かったのでしょう?

上下、前後、それぞれに分けて、変更経緯を述べていきます。

復元図が変わった経緯〜上下編〜

まず、復元図が上下逆だった経緯について。

1911年のカナダ。
ここでハルキゲニアの化石が発見されました。

発見したアメリカ人の考古学者、チャールズ・ウォルコットは、背中に毛の生えたカナディアに属する生物としました。

カナディアは多毛類でムカデのような細長い生き物のこと。
長いけど鋭いトゲは持っていません。

 

しかしその後、同じ考古学者のサイモン・コンウェイ・モーリスによって復元されたのが、お腹に長いトゲが生えているもの。

サイモンはトゲで歩行し、背中にある触覚でエサを取って口に運んでいたと考えていました。

カナディアがお腹側にも毛があって、この毛を使って歩行していたから、このように描いたのでしょうね。

しかしカナディアは毛であってトゲではない。
トゲで歩行するって考え、とても斬新ですよね。

 

しかし、中国の澄江(チェンジャン)で発見された化石で、ハルキゲニアはカギムシと同じ仲間であることが分かりました。

カギムシとはナメクジのような形に足がたくさん生えている生き物。
エビやカニなどの甲殻類や昆虫の元になっているとされてます。

中国の化石の発見によって、ハルキゲニアは、背中に生えた触手の部分が足
お腹に生えた長いトゲは背中に生えていて、敵から身を守るもの

…ということが分かり、復元図が修正されました。

確かに甲殻類も昆虫も鋭い足ですが、サイモンの復元図のトゲほど鋭い足ではないですよね。

 

このように、復元図が大幅に変更されるケースは他にもあります。

メジャーなものではティラノサウルスでしょうか?

爬虫類みたいな表皮をしていましたが、最近では毛が生えていたということで復元図が変わりました。

以前の復元図とは全く別の生き物みたいに見えます。

同じ恐竜で、イグアノドンは復元図が2回も変わりました。

二足歩行だったのが四足歩行に直されています。

他にも親指の爪を描いていたけど一旦なくなり、また新しい復元図で親指の爪が復活しているとか…。

 

このように、長年にわたる化石の研究によって姿形が変わるのは自然なこと。
復元図は奥が深く、研究者の推測によってその姿は反映されます。

化石に残る部分はほんの一部だからです。

その復元図がたとえ私たちの常識を覆す奇想天外な作りだったとしても、研究を進めていったら本当に奇想天外な作りなのかもしれない。

もしその仮説が間違っていたとしても、正しい復元図を作るためのよいキッカケ作りになると私は思います。

「いや、この復元図はおかしい。絶対に違うということを証明してやる」

…という風に。

さて、話を戻しましょう。

こうして上下逆だった復元図が修正されましたが…
ハルキゲニアの前後の姿ついてもまだ解明されていませんでした。

しかし近年の研究で、顔にあたる部分がどっちなのかが分かったのです。

復元図が変わった経緯 前後編:

前後が逆だった。

つまり顔だと思っていた部分が顔ではなかったということですが、どうしてそうなったのでしょう?

今までは、ハルキゲニアの頭部が丸いのは形が崩れただけであるとされていましたが…
頭部だと思われていた部分をよく調査すると、死後に肛門から出た内臓に関連するものだと分かりました。

そして、体の後部と考えられていた部分に目と歯のある口を発見。

口は円形で、歯は尖っています。
喉の奥には食べたものの逆流を防ぐ歯も確認されました。

本当、まるでエイリアンのよう…。

このエイリアンのような歯は、脱皮する生物(エビやカニなど)の初期の歯と類似しています。

 

しかしなぜ上下前後、大幅に変更する事態にまでなってしまったのでしょうか?

推測するに、生物の種類が特定できなかったからでしょう。
実際、ハルキゲニアの姿は現存する生物とあまりにかけ離れた姿をしています。

それがますますどのグループに属するのかを分からなくさせていたのでは?

もし、ハルキゲニアが最初からカナディアではなくカギムシに属すると初めから分かっていれば、せめて上下の姿くらいは変更されていなかったと思います。

 

属するグループが分かった現在。

ハルキゲニアは甲殻類と繋がりがあるんだなと分かります。

ハルキゲニアが生きていたカンブリア紀。
カンブリア爆発という、新しい生物が大量に出てきた時代。

カンブリア紀を生きた生き物たちはハルキゲニアの他にもいます。

カンブリア紀でどんな生き物が好きか?と聞かれるとハルキゲニアと答える人がいると思いますが…
それ以外の生き物が好きだという人もいます。

それ以外の生き物ってどんな生物がいたのでしょうか?

ハルキゲニアの他にカンブリア紀を生きた生物たち

カンブリア紀の生物はハルキゲニア以外に何がいたのでしょう?

いくつか紹介します。

ミクロディクティオン

ハルキゲニアに近い種といわれています。

体長は2.5センチメートルの細長い体に、足が10対ほど。
足の付け根に丸いもの(骨片)が付いているのが特徴。

まるで、風の谷のナウシカに出てくる王蟲(オウム)の丸い部分みたいです。

王蟲みたいに怒ったら丸い部分の色が変わるという現象はさすがにないですが…。

アユシェアイア

見た目はイモムシのような姿をしていて、足には節はないですが足の先端に爪があります。

アユシェアイアは主に海綿を主食としています。

足の爪も海綿に繋がるために発達したものです。

アユシェアイアと同じ仲間になるカギムシは肉食系
同じ仲間でも食べるものはそれぞれ違うのに個性を感じます。

アノマロカリス

同じくカギムシの仲間です。

奇妙なエビという意味で名付けられました。
確かに目はエビのようにつぶらな瞳をしているところが似ていますね。

体長は大きくて、だいたい60センチメートルほど!
カンブリア紀最強の捕食者といわれていました。

アノマロカリスは丸い口をしています。
口は二重構造になっていて、外側の口が開くと内側の口が閉まるという複雑な構造です。

交互に繰り返すことで捉えた獲物を逃さず食べるということなんですね。

最強の生き物といわれる理由は、いかに獲物を逃さないか工夫がされていたからということなのだと分かります。

アノマロカリスの仲間といわれているものがいくつかあります。

パンブデルリオン

ムカデのような形かと思いきや、顔にあたる部分は翼を広げた鳥みたいな形をしています。

足が太くて短い。
アノマロカリスと同じ構造の口を持っています。

体長は20センチメートルほどなので、ちょっとゲームに出てきそうなモンスターのミニチュアみたいです。

パラペユトイア

他のアノマロカリスと異なり、ヒレに肢を持っているのが特徴的。

触手はありますがトゲはありません。

アノマロカリスより前に誕生しているということですが、進化の過程は現在も謎に包まれています。

ピカイア

体長は5センチメートルほど。
ナメクジウオみたいに細長い姿をしています。

背骨の原型である脊索を初めて持った生物です。

見かけは細長くてふにゃふにゃしているのに、脊索を持っているとは意外ですね。
なので、私たち人類を含む哺乳類や鳥類、爬虫類の遠い先祖といわれています。

小さくて細長いけど、私たちの祖先かもしれないって聞いたら親近感が湧いてきますね。

ネクトカリス

クリオネのような姿をしています。

泳ぎ方はクリオネのように縦方向に泳ぐのではなく、エイみたいに横方向に泳ぐのですが。

体の中がロート状の構造が見られ、ジェット状に水を噴射して泳いでいたのではないかといわれています。

ジェット噴射で移動するって…
他の生き物でもそうそういないですよね。

 

以上です。

カンブリア紀には他にたくさん生き物がいましたが、今紹介したのはほんの一部。

しかし、先ほど紹介したものはすでに絶滅してしまっていて、手がかりは化石しかありません

まぼろしを意味するハルキゲニア。
ハルキゲニア以外の生き物も、絶滅しているという点では、まぼろしの生き物ともいえます。

ハルキゲニアについて、またそれ以外の生き物もたくさん説明しましたので、最後にまとめます。

ハルキゲニアのまとめ

ハルキゲニアはどんな生き物なのか。
どんな姿をしているのかを説明しました。

トゲで歩行していたとされてましたよね。
そして、その姿は上下が逆で、トゲで歩行していなかったことが分かりました。

その後、研究を進めていくうちに前後も逆の復元図であったことが解明されて…
真実の姿に近くなったということが分かりましたね。

その他カンブリア紀を生きた生物たちもいくつか紹介しました。

カンブリア紀にはハルキゲニア以外にもたくさんの生き物が存在。
ハルキゲニアは絶滅。

しかし、研究者に限らずカンブリア紀を愛する一般の人々に未だ語り継がれることってそれだけ魅力があるということ。

今後も化石が新たに発見されるたび、ますますハルキゲニアの不思議が解明されて面白くなりそうですね。